動線を取得する4つの方法
人の動線を取得するためには、非常に細かい位置情報をつなぎ合わせていきます。この位置情報の精度や取得間隔が荒いとざっくりとした動線となります。逆に誤差数㎝程度の非常に高い精度や、1秒間に何十回も狭い間隔で位置を取得すると精緻な移動を取ることができ、実際のイメージに近い「動線」を取得することができるようになります。
ここでは、地図アプリやカーナビなどで利用されるGPSによる屋外動線利用ではなく、室内の動線を取得する方法についてご紹介していきます。
室内動線は、Amazon Goに代表される店舗内でのマーケティングやセキュリティ活用や、工場など室内作業員の作業効率化への活用が期待されています。
ネットショッピングでは、顧客のページ遷移やカート投入などのアクションを取得して、データ分析を行い売上拡大につなげていく手法が一般的です。一方、リアル店舗では大規模な店舗であってもPOS情報から購入した情報しか取ることができていませんでした。
どれくらいの人が店前を通行し、入店し、通路を通過し、売場に立寄り、滞留し、手を伸ばして、購入しているのか。この購入する/しない前までの行動をデータとして取得するために動線取得が活用され始めています。
その中でも店舗分析ではざっくりした位置移動だけではなく、入店から退店までひとつなぎの精緻な動線を求められることが多くなっています。
それでは、動線取得のために用いられている「人」「タグ」「カメラ」「センサー」4つの方法をご紹介していきます。
人
調査会社の専門スタッフが、来店客ひとり一人の動きを実際に確認しながら行動調査票を作成する方法です。どのように売場を通って、どの商品に手を伸ばして、どれをかごに入れたのかを逐一目で確認していきます。
設備投資が必要ないので、自社スタッフでも手軽に始めることができるのがメリットです。
ただし、来店客にずっと付き添う必要があるので、1動線あたりのコストが高くなり、すべての来店客の動線を取ることはできず、動線取得数には限界があります。また、調査員のスキルに依存することや、速度や正確な位置などの統計データを取得することができない点がデメリットです。
タグ
ビーコンなどのタグを来店客が所持します。タグの情報は、店内に設置した受信機によって、どの位置にどのタグがいるのかを取得し、つなぎ合わせることで動線にしていきます。カートやカゴにタグを仕込むほか、スマホアプリを利用するケースや、事前に来店客に動線取得を行う旨を説明して入口でタグを持ってもらうケースなどがあります。
ビーコンは、安価で導入しやすいのがメリットです。一方、タグを所持している人しか計測できないため、計測対象が限られてしまいます。
また、受信機の数にも拠りますが、位置情報の誤差が大きく、一般的な店舗では動線データとして使うことは難しいケースが多いです。ショッピングモールなどで、大きなエリア間の移動を見る場合には利用できますが、スーパーなどの売場単位での細かい移動を見るためには誤差が大きくなる傾向があります。
カメラ
既に店舗に設置してある監視カメラや、新しいカメラを設置して動線を取得します。気になる点は画像で確認したり、顔認証カメラなどを併用すれば、性別・年代やリピーターであることを判断したりすることもできます。
ただし、一般的なカメラでは距離を取得することができないため、混雑している場合など人の重なりが発生する場合には取り違えが多くなり、個々の動線を「追跡」することができません。通常のスーパーやコンビニなどでは、カメラからみて人が重なる状況は頻発するため、動線取得をし続けることは非常に難しくなります。
入口やレジなどの狭いエリアでの人数カウントとしてカメラを利用することは有効ですが、広いエリアの動線分析には向いていません。一方カメラに映る範囲であれば、全員がカウント対象になるので、人やタグ形式と比べると、計測対象数は大きくなります。
また、カメラの中でも3Dステレオカメラのように距離を取得することができるものや、真下向きにカメラを設置して人の重なりを防ぐことができれば、動線追跡に利用することが可能です。
センサー
赤外線センサーは、人には見えない安全な光を照射して跳ね返った時間で位置を計測します。2D、3Dなど様々なタイプのセンサーがあります。自動運転技術で用いられている3DLiDARも赤外線を利用しています。3Dの場合は、天井に設置したセンサーから放射状に赤外線を照射しシャワーを浴びているようなイメージです。距離を測定することができるのがカメラとの大きな違いで、誤差数㎝で位置を計測しつづけることができ、混雑しやすい店舗でも動線を計測できます。位置情報が正確なため、売場の滞在時間や、速度も算出することができます。
カメラと同じくセンサー照射範囲であればすべて計測対象とできるので、人やタグ形式と比べて動線対象数が大きくなります。
一方、タグや既存のカメラを利用する場合に比べると、センサーはまだ高く、新規設置が必要なため工事コストもかかりやすいです。近年は自動運転技術などセンサー自体の技術の進歩がめざましく、今後コストは下がってくると想定されます。
ハイブリッド型
今までご紹介してきた複数のデバイスを併用して動線を取得する方法もあります。
例えば、動線取得はセンサーで実施し、属性情報付与に顔認証カメラを使うケースがあります。カメラから得られる性別・年代、リピーター判定情報と、センサーから得られる動線を結びつけることで、分析の幅がひろがります。他にも設置場所によって、センサーやカメラが置けない場所にのみタグを利用し、センサーやカメラで取得しているエリアに動線を引き渡すケースもあります。
まとめ
動線を取得する際は、その活用目的のために
・対象(全員なのか、一部の顧客のみなのか)
・精度(エリア間のざっくりした移動を見たいのか、ひとつなぎの動線を見たいのか)
・範囲(入口だけなのか、店内全体なのか)
によってデバイスの選択肢が異なってきます。
現在の技術では、「全来店客」の「店内全体」の「精度高い動線」を取得するためには、センサーによる動線取得が有力です。
動線分析Moptar
動線分析Moptarは、特定のデバイスに依存しない動線分析ソリューションです。センサーやカメラなど顧客の目的に合わせたデバイスをご提案し、動線取得を行います。
動線を取得するだけではなく、店内レイアウト改善などの店舗分析や、デジタルサイネージへのOne to One表示、店舗・ECをまたいだOMO施策、工場などでの作業時間計測など様々な用途にご活用いただけます。
詳しくはHPをご覧ください。
https://growth-verse.ai/product/moptar/