京王線沿線を代表する大型商業施設、京王聖蹟桜ヶ丘ショッピングセンター(以下、京王聖蹟桜ヶ丘SC)。地域に根ざした運営を続けながら、時代に合わせた大規模なリニューアルを計画する同施設において、今「人流データ」が意思決定の要となっています。
今回は、全館リニューアルに向けた仮説検証のために、人流分析AI SaaS「ミセシル」をご活用いただいた事例をご紹介します。
京王電鉄株式会社から分社化し、聖蹟桜ヶ丘エリアの街づくりを牽引する株式会社京王SCクリエイションより、聖蹟桜ヶ丘事務所の山路様と木村様にお話を伺いました。
目次
駅直結の「生活密着」と「広域集客」が共存する複雑なフロア構成
―まずは、京王聖蹟桜ヶ丘SCの施設概要と特徴について教えてください。
山路氏:京王線聖蹟桜ケ丘駅直結のショッピングセンターで、直近1年の売上高は約330億円、1日あたりの入館者数は約5万人を誇ります。駅直結という利便性から、平日は地元にお住まいの方々が足繁く通ってくださっており、休日は遠方からも多くのお客様にお越しいただいております。

株式会社京王SCクリエイション 営業推進部 聖蹟桜ヶ丘事務所 京王聖蹟桜ヶ丘SC・京王高幡SC・京王多摩センターSC 支配人 山路 直 氏
近年の変化としては、多摩市および駅周辺にタワーマンションの新設が相次いでおり、ここ4〜5年で足元500m圏内だけでも1,000世帯ほど人口が増えています。百貨店を核としているため、古くからご愛顧いただいているお客様を大切にしつつ、変化する居住層に合わせて今後も引き続き順次リニューアルを行っていく計画です。
―京王聖蹟桜ヶ丘SCは、A館・B館・C館・さくらゲートと複数の館で構成されていますね。
それぞれの役割はどう分かれているのでしょうか。
山路氏:A館は京王ストアを核とした大箱テナント中心の広域集客型、B館はバスターミナルがあり京王百貨店と専門店が並ぶ中心的な施設です。C館は駐車場併設でオフィスやクリニック、レストランなど生活を支える機能が揃っています。他にさくらゲートもあります。
―山路様たちが所属されている「株式会社京王SCクリエイション」の役割についても伺えますか。
山路氏:もともとは京王電鉄の一部署でしたが、一昨年2024年に分社化し、稼働を始めたばかりです。営業推進部として既存施設の運営を担っています。
木村氏: 私たちの事務所は、聖蹟桜ヶ丘のほか、高幡不動、多摩センターという3つのSCを管理しています。京王線は駅間距離が短いため、一つひとつの駅の乗降客数は多くはないものの、その分「足元密着型」の施設が育ちやすい土壌があります。その中でも聖蹟桜ヶ丘は、京王電鉄が街づくりから深く関わってきた象徴的な施設です。

株式会社京王SCクリエイション 営業推進部 聖蹟桜ヶ丘事務所 京王聖蹟桜ヶ丘SC・京王高幡SC・京王多摩センターSC サブマネージャー 木村 優斗 氏
「回遊の分断」という仮説を、ミセシルで証明する
―今回は2024年11月から2025年10月までの1年間分の人流レポートをご活用いただきました。なぜ、あえてこのタイミングで人流分析が必要だったのでしょうか。
山路氏: 今後想定されるリニューアルに向けて、特にB館の「東西の回遊」が起きていないのではないかという仮説がありました。B館は百貨店エリアと専門店エリアに分かれているフロアが多く、お客様の動きがそれぞれで止まっているのではないかという仮説を持っていたんです。
ミセシルの強みは、同じ建物内であっても「フロア間移動」や、「エリアごとの回遊」を精度高くデータを出せる点にあります。そこで、あえて百貨店と専門店エリアの区別がない「6階」と、エリアが分かれている「他のフロア」を比較することで、回遊状況の違いを明確にしようと考えました。
―実際にデータを見てみて、いかがでしたか?
山路氏:仮説は正しかったと確信できる点が多かったです。6階は東西の回遊が活発なのに対し、2〜5階は明らかに専門店のお客様は専門店、百貨店のお客様は百貨店と、動きが分断されていました。「仕切りをなくし、親和性のあるテナントを配置すれば回遊は生まれる」という主張の、強力な根拠が得られました。

―ターゲットの居住地(商圏)についても、何か発見はありましたか。
木村氏:基本的には足元のお客様が中心ですが、フロアによっては八王子方面など、少し離れたエリアからも集客できていることがデータで裏付けられました。
山路氏:特に驚いたのは京王百貨店の特定階です。もともと「八王子からの百貨店を利用されるお客様が増えている」といった大枠は把握していましたが、ミセシルの詳細な分析により、ある特定階において八王子在住の40代女性がしっかり集客できているというピンポイントな事実が見えてきました。
リニューアルにあたっては「何を変えるのか」という決断も必要になりますが、一見人流が少なく見えても「広域集客に貢献している」という価値があるフロアだと分かれば、安易に変えるべきではない。こうした判断ができたのは大きな収穫です。
経営層への説明会。「数字は嘘をつかない」からこそ深まった議論
―今回のレポートを、経営層への説明資料としてお使いいただいたとお聞きしました。
山路氏:はい。説明の際、「エリアの仕切りを無くすだけで本当に人は回遊するのか?」という質問がありました。これまでは他社施設の成功事例を出すことしかできませんでしたが、今回は「自館の6階では現にこれだけの回遊が起きている」と、自社の数字をもって証明することができました。
木村氏:改装の決裁を得る重要な説明において、納得感のある根拠を示せたのは大きかったです。
山路氏:数字は嘘をつきません。見込みたい効果を定量的に説明できたことで、社内でも高い評価を得られ、非常に建設的な議論ができました。経営層からも「今後はフロア内の人流も定期的に追っていくべきだ」という意見が出るなど、社内の意識も変わったと感じています。
また、京王グループ全体で、売上などの財務指標だけでなく、その要因となる「非財務指標」をKPI化する取り組みが進んでいます。今回の人流分析は、まさにその先駆けとなる取り組みとなりました。

ミセシルの柔軟性と、「購入していないお客様」の動きが見える価値
―京王様はハウスカードの購買データも豊富にお持ちかと思います。あえて人流データを使う意義はどこにあるのでしょうか。
山路氏:弊社のお客様はカード保有者が多いため、購買分析は得意です。しかし、購買データだけでは「買わなかったお客様」の動きが見えません。購入有無にかかわらず、どのフロアをどう回ったのか。そのプロセスが見えるのがミセシルの特長です。1店舗だけで完結しているのか、複数を回っているのかを知ることで、フロア構成の良し悪しを判断できるようになります。
―プロジェクトの進め方やスピード感についてはいかがでしたか。
木村氏:依頼から約3週間という短期間でレポートを納品していただきました。最初に出していただいた結果に対し、「6階をさらに細かく区切って比較したい」といった追加のリクエストにも柔軟かつ迅速に対応いただき、非常に助かりました。
―今後、人流データをどのように活用していきたいとお考えですか。
山路氏:これからも順次リニューアルを行いますが、その後1年間ほどデータを蓄積し、改めて効果検証を行いたいと考えています。ある程度の母数を溜めてからまとめて分析するスタイルが、当施設には合っていると感じています。
―これからミセシルや人流分析を検討される方へ、アドバイスがあればお願いします。
山路氏:「明確な仮説を持つこと」に尽きますね。継続的にデータを受け取っていても、何をしたいかが不明確だと宝の持ち腐れになってしまいます。また、大規模なリニューアルなどの「施策」の前後に合わせることで、データの価値は最大化されると思います。
木村氏:リニューアルなどの施策企画のための利用の場合は特に、「何を知りたいか」を絞り込むことが成功の鍵ですね。
山路氏:加えて、自館の数字だけを見るのではなく、比較対象を持つことも重要です。他社の情報を仕入れたり、自社の別施設と比較したりすることで、ただの数字を「意味のある数字」に変えることができるはずです。
―本日は貴重なお話をありがとうございました。 「ミセシル」のデータが、京王聖蹟桜ヶ丘SC様の次なる10年を創るための、力強い意思決定の材料となったことを大変光栄に思います。今後も、リニューアルをはじめとする各種施策の効果検証など、データを蓄積して最適なレポートを提供し、貴社の進化をサポートさせていただきます。
ニュース一覧に戻る